様々な病気やケガの中で、ガンが一つの保障の対象として独立して取り扱われているのは、現代日本人がガンに対して抱いている並々ならぬ関心をよく表しているように思われます。二人のうち一人は一生涯のうちにガンにかかると言われています。このデータを元に、「だから、ガンにかかる確率は高いんだ」と言うわけではありません。しかし、周囲に、ガンにかかったことがある人、ガンで亡くなった人は案外いらっしゃるのではないでしょうか。
ここから、がん保険に入られる方が少なからずいることはご理解いただけると思います。では、そのがん保険はどのような商品か・・・そうなると、あまり良くわからないという人もいるのではありませんか? 今回は、Z生命の「がん保険」をオーソドックスながん保険として取り上げ、解説していきたいと思います。
がん保険の一般的なモデルについて
がん保険もまた、保険の本体である主契約とオプションである特約からなります。このがん保険の主契約は、①診断給付金、②入院給付金、③手術給付金、④退院給付金、⑤通院給付金からなります。がん保険の基本となるのは、①です。この点について、少し詳しくお話しましょう。まず、現代のがん治療では、必ずしも、入院して手術、という形になるわけではありません。手術、抗がん剤、放射線治療を合わせて三大治療と言いますが、このうち後者二つの組み合わせだと、通院だけで、結局切らずに治療が進むということがあります。そのときに、医療保険では極めてベーシックな②入院給付金は役に立たないかもしれません。しかし、①診断給付金は治療は問わず、がんの診断が確定した時に支払われます。ですから、幅広いがん治療に対応することができます。①はすべての場合のベース、③、④は②を補完、⑤は放射線治療や抗がん剤治療の場合に機能するということになるでしょう。
この主契約に ⑥がん先進医療給付金の特約を付加して、①~⑥までで極めてオーソドックスながん保険という扱いになります。
さて、ここからは、任意で選ぶオプションとしての特約になりますが、まずはがん重点保障という特約が用意されています。これは、退院日から再入院日までの期間を保障するものです。がん保険は、病気の特性上、再発を考慮した保障が用意されている場合が多いようです。
次に、医療保障ですが、特約として医療保険がつけられるようになっています。入院給付金と手術給付金がありますが、がんで入院した場合には重複しないよう設計されています。仮に、がん保険と医療保険に個別に入っている場合には、がんで入院した時には双方から保障が得られるので、比較のポイントとなるでしょう。
最後に、死亡保障として、10年定期の死亡保険がつけられます。ここは、終身の死亡保険が付けられる商品も他にあり、また、死亡保険自体に別口で入るという方法もありますので、ここも比較のポイントとなるでしょう。
損保のがん保険と生保のがん保険
普通、がん保険というと、生命保険会社のがん保険を想像します。そして、業界で標準的な商品はこの生命保険会社のがん保険です。まず、診断給付金が有り、入院給付金・通院給付金が有り、そのほかに支払事由が発生すると、給付金が支払われる、というものです。しかし、それとは考え方が全然異なるがん保険も存在します。
S損保のがん保険は、実際かかった治療費を実額補償するという考え方をとっています。保険の構成は極めてシンプルであり、まず、診断給付金については、日額保障タイプ(一般的ながん保険)と同じように支払われます。しかし、入院給付金、通院給付金、手術給付金、先進医療・・・といった給付金が支払われる仕組みではありません。治療に実際にかかった費用が支払われるというものです。たとえば、「実際に、30万円かかりました」という時に30万円が支払われます。対して、よくあるタイプの日額保障の保険は、「10日入院し、手術しました」という治療内容から保険金が算出されます。対比してみると、損保の保険は、実に損保らしい考え方だと思います。
ここまで、記事を読んだ方は、ではどちらが得なのか? と聞きたくなると思います。少し想像してみましょう。たとえば、「日額タイプ」のがん保険では、実際の治療にかかるよりも大きな保障をつけることができます。上記の例で言えば、「実際に30万円かかりました」という治療に対して、S損保のがん保険は(診断給付金100万円と合わせて)130万支払われます。しかし、日額保証タイプでは、おそらく、日額1万円の保障をつけていれば200万円近く保険金が支払われるのではないかと思われます。また、大きな違いとしては、このS損保のがん保険は、定期の保険であり、5年ごとに自動更新されます。ということは、「日額タイプ」が一生涯保障で、一度入った保険料で一生変わらないのに対して、S損保のがん保険は、保険料が更新されていくことになります。(その分元々の保険料は安いですが・・)
どちらが得かは一概に決められません。「日額タイプ」で保障を大きくすれば、損保のがん保険に比べてかなり保険料が高額になるはずです。しかし、がん保険に関して、安ければいい、というわけでもありません。ガンにかかり、入院・通院をすることになると、仕事や家事などを行うことができず、大きな機会損失が生じます。このときに、大きめの保障があれば、治療費以上の助けになります。
しかし、その金銭的負担をすべて保険でまかなうか、という点も保険に加入される方の考え方次第です。つまり、お金が必要なら貯金でいいじゃない、という割り切った考え方も可能です。
そこで、私が提案するとすれば、若年者の方に対する場合です。若年者の方が医療保険、がん保険を考えるときには、私なら「日額タイプ」のものを勧めます。なぜなら、この人達は、まさしく「体が資本」の状態であり、これから貯蓄を創っていく立場にあるからです。そんな時に、出だしで躓いてしまう可能性を考えると、治療費以上の保障が受けられるプランをおすすめするでしょう。